まるでシャボン日記

アラフィフぼっち女の悲喜こもごも

辻仁成「父ちゃんの料理教室」vs 母の味

換気扇の掃除に来てもらったら、業者の方に「揚げ物よくされますよねー」と言われた。

母は、「ああ、まあ、そうですねえ」などと答えていたが、いや、多い。すごく多い。

お母さん、あなたの料理は揚げ物が多すぎます。

夜の11過ぎに帰宅すると、トンカツやメンチカツや唐揚げが待っていることが、多々ある。

そんな時間から、中年女が食べるものではないが、せっかく作ってくれたものを食べないわけにはいかず、しぶしぶ食べる羽目になる。もちろん、胃にもたれる。

なんども、揚げ物はやめて欲しい、とお伝えしているが、そうすると何を作ったらいいのかわからないらしく、結局揚げ物になった、などと言って、おかまいなしに出てくる。

いい加減にして欲しい、まじで。

 

そんなことを思いながら、辻仁成さんの新刊を読んだ。

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辻仁成「父ちゃんの料理教室」

辻仁成さんは、パリで息子さんと二人暮らし。

子どもの頃から作ってあげていたレシピを、息子さんに伝授するという形で書かれたお料理エッセイだ。

 

コロナ第一派の頃、辻さんのTwitterやブログをよくみていた。

パリのロックダウン下で、17歳の息子さんと仲良く、時に喧嘩したりしながら、頑張っていることを伝えてくれて、ステイホームの間、元気をもらっていた。

 

特に好きだったエピソードは、これ。

www.designstoriesinc.com

子どもの友達が遊びにくるというので、ショートケーキを作るという話。

子どもたちはもう大きくなってしまって小さな子どもではないんだけど、張り切って小さい頃に喜んでくれたケーキを作ってあげる父ちゃんが、なんとも切なくて可愛くて、癒されるエピソードだった。

 

この本のあとがきには、シングルファーザーになった時のことが綴られている。

息子も自分も絶望して、あまり食べられなかったこと、胃潰瘍になってしまったこと、息子は夜な夜な涙でぬいぐるみをびしょ濡れにしていたこと・・・。

そんな中で、とにかく食べなくては、と料理をし続けたという。

家族を壊さないために。

 

そして、辻さんは、息子さんにお料理を伝授して、自分でしっかり食べれる人になって欲しいと思っているようで、普段から手伝わせたりもしているらしい。

 

うちの母は違う。

母は、どちらかというと、私が料理をするのは好きではないし、手伝っても文句を言われることが多い。

子どもの頃、ジャガイモを剥いたら、「あなたが剥くとジャガイモがかわいそう(皮が厚過ぎ)」と言われた。以来、あまり料理をしなくなった。

実は嫌いじゃないので、たまにはするのだけれど、大概文句を言われて、あまり美味しくないというので、基本的には台所には入らない。

 

女親にとって、料理はマウンティングの道具なのだと思う。

実の娘にもそうなのだから、お嫁さんなんかにはもっとひどい態度になる人も当然いそうだ。

忙しくて料理は面倒と言いながら、マウンティングの材料にもなるという・・・料理は、女にとって、単に料理という以上の意味があり、結構ややこしいものであったりもする。

 

男同士はそんな変なマウンティングがなくていいな、と思う。

なんだか美しいのだ。それが羨ましかった。

 

生きるために食べよう。

誰かに喜んでもらおう。

料理なんて難しくない。

作ることは楽しいこと。

 

そんなシンプルな、料理への思いが伝わってくる。

こんなお父ちゃんに育てられて、良かったんじゃないかな、息子さん。

(ま、もちろん、いろいろあったでしょうけど)。

 

とはいえ、私も、母が亡くなったりしたら、きっと、トンカツを思い出すんだと思う。

やっぱり、あのトンカツが食べたいなー、なんて思うんだろう。

それで、夜中に突然トンカツ揚げたりしそうだ。

 

本には、美味しそうなレシピも満載!

パリで日本人が作る家庭料理だから、昔ながらの洋食系や、アジアン料理を和っぽくしたものなど、どれも作りやすそう。

私も父ちゃんに習いながら、一個一個作ってみるつもり(母の目を盗んで)。

 

 

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