暑すぎる日、クーラーの効いた部屋で一気読みしてしまった。
うなずきすぎて首がもげそうになった。
笛美さんは、私より多分15歳くらい年下の方だと思うのだけど、メディア系の職種ということもあって、ほぼほぼ私と同じ経験をしていた。
もちろん私は、笛美さんほどエリートではない。
けど、そこそこ会社で出世ってやつをした。
理由は、彼女もいう通り、「男社会でがむしゃらに働いたから」でしかない。
彼氏を作らず、婚期を逃し、深夜まで働くか朝まで仕事関係の人と飲み歩き、泥酔してタクシーで帰っても咎める家族もなく、土日はぐったりと寝ているか、それでもなんとか身繕いするためにデパートで買い物するのがせめてもの気晴らし・・・。
(渋谷でキャッチのお兄さんに「休日は一人でショッピングが楽しみって感じ?」と憐れまれ、キーッとなったのを今でも覚えている)。
ちなみに、私は途中で一度結婚したが(とにかく焦っていた)、上記のような生活をほとんど変えなかったことにより離婚にいたった。
果ては実家に出戻り、母という専業主婦を得たことにより、私はより一層、仕事ばかりできる/するはめになった。
そうなれば、こっちのもの(?)で、名誉男性だかなんだか知らないが、とにかく24時間働け、という男社会にはもってこいの人材になったというわけだ。
回りを見渡しても、数少ない出世した女性は、そのほとんどが、未婚または離婚経験者だ。
そうでなければ出世できないし、逆に言えば、そうすれば出世できる。
ああ、こんな社会にしてしまった先輩としての私。
本当に若い女性たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
笛美さんは言う。
「高学歴・高収入・広告代理店のクリエーター」
もし私のプロフィールが男だったら、きっと多くの女性にモテて、今ごろ美人の奥さんと可愛い子供と愛人がいたんじゃないかと思います。でも、同じスペックでも性別が違えば、まったく別の運命になってしまうんです。
ああ、まさに、それ!
私もずっと思ってきた。
私だって、30歳過ぎた頃には、先輩のしごきに耐え、人一倍働いたことにより、編集デスクだったか副編集長だったか、それなりの地位を得ていた。
そして、話が面白い、という理由で、男の人に遊び相手としては喜んでもらえていた気がする。(それをモテるとさえ勘違いしていた)。
けど、こと結婚となると、私にその価値はなかった。
私には夫も子どももできない。家族を作ることはできない人材。
こんなに頑張ったのに、なんで女だと家庭に恵まれなくなってしまうの?
男なら、頑張れば、女や子どもは後からついてくるのに。(もちろん、みんながそうじゃないし、病気とか事故とかいろんなことはあったとしても)。
私の場合は編集者なので、女性も多い職場だし変人も多いし、独身者や離婚経験者もわりと生きやすい業界ではある。
けど、それでもやはり、男の編集者は、どんなに仕事しないおっちゃんにもだいたい妻がいて、家事と子育てを担ってくれている。
しかも、これは裏話だけど、編集者は浮気し放題だ。校了で朝になると言ってしまえば朝まで他の女と遊ぶことはできるし、出張も多いので、彼女と旅行なんてのも簡単だ。
しかもそれをネタに企画を出したりもできるので、それこそ浮気も仕事のうちとか言い出しかねない。
だいたいの妻は、そんな夫のことは言わないけど気づいている、らしく、そんな破天荒な彼をさえ、受け入れている、らしい・・・
ずるい。羨ましすぎる。
なんで、私にはそういう男がいないの?
ちなみに、ちょっと厄介なのは、女の編集者は編集者で、「厄介な私を受け入れてくれる夫」を持っている人もいたりする。
そうすると、そこでまた、私にはそういう男がいなーい!という劣等感を持ったりするのだ。(こうして、女の敵は女、こじらせバージョンが出来上がる)。
まあ、でも、そういう人は稀か、単純に夫を養っていてそれはそれで疲弊してたり、ダブル不倫の仮面夫婦ってことも多い。
それにしても、優秀な女性が潰されていくのにはいろんな形があると思った。
結婚や出産で社会から去っていってしまう人も多いけれど、
社会で活躍していても、自分が幸せになれない(結婚できない)せいで才能を伸ばせないこともあるのだ。
笛美さんも第一線から退いたとのことだったが、確かに、努力が自分自身の幸福として報われなければ、疲れてしまうのは当然だ。
そう言う潰れ方もあるのだと、暗澹たる気持ちになる。
まあ、何を隠そう、私もそうだ。惰性で仕事はしているけれど、感じるのはひたすら疲労感なのだ。
アラフィフになっても、「それでも働く意義」を彼女に説く言葉は持っていない。
根本原因は、やはり「男女差別」なのだと、私も私の経験から、心の底から理解している。
今までいろんな「女子論」があった。「負け犬の遠吠え」とか。
けど、まだまだ男性社会の中にどっぷり浸かった上での女の生き方考察が多かったように思う。
けど、これは「フェミニズム」の立場を明確にしているし、男女平等の道を切り開こうとしている本だった。
しかも、学問としてではなく、実体験からの考察と行動に、これも女性らしい戦い方だという気がしている。
それだけでも、少しだけ明るい気持ちになったし、私も、何もできなかった先輩として、これからできることをしていきたい。
とはいえ、私も、まだまだこういうことを実名で語れないところがある。
そういう世の中も変えていけたら、、と思いつつ、しがないブログに書いてみる。
もっとたくさんの人にぜひ読んでほしい本!
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