まんぼう明けの土曜日、友人と鎌倉でランチすることになった。
当日は天気も良くて、風も爽やかな最高の日。
私たちは、人気の松原庵を予約してテラス席に座り、鎌倉ならではのゆったりした時間を満喫しながら、近況を交換しあった。
同級生の私たちは、お互いにアラフィフ。
なんと中学生の頃からの付き合いで、部活や受験、初めてのデート、彼氏との喧嘩、そして結婚式、新居のお披露目などなど、人生の色々なシーンを共有してきた。
友人はとても優秀で、某有名商社に新卒からずっと変わらずにお勤めしている。
今まで、仕事が嫌だという話は聞いたことがなく、私が仕事の愚痴を吐いても、あんまりピンとこないというような人だった。
それが、この日はじめて、「仕事が辛い」という話を聞くことになった。
彼女は大学卒業後、一般職として入社して、今までずっと事務方の仕事をしていた。
それが去年、いきなり営業に回されたのだそうだ。
「この歳から新しい仕事はきついよ」と彼女は言い、「もう辞めちゃおうかな」とまでいうので驚いた。
居心地がよくお給料もいい優良企業に勤めているのに、ここへきてなぜ?と。
けれど、彼女がいうには、「最近、50代の先輩たちがどんどん辞めていってる」のだそう。
一番の理由は、「もういいかな、と思ったから」なのだという。
もうこれ以上仕事をするモチベーションもないし、定年まで頑張ってお金を稼いだところで、その時に自分には何も残っていないのではないかと感じる。
やりたいことがあったとしても、60過ぎでは体力も落ちているだろうし、十分にやれない可能性だってある。
だったら、まだ体力のあるうちに、少しくらい金銭的に損だとしても、会社を辞めて自分のやりたいことをやろう。
そんな風に決心をする人が多いのだそうだ。
なるほど、そういう世代だし、そういう時代でもあるんだろうな、と思った。
もう定年までひとつの会社で勤め上げて、あとは年金をもらって悠々自適、なんていう時代でもない。
50代で会社を辞めるのは、リタイアというより、もうひと花咲かせるためなのかもしれない。
実際、人生100年時代だとしたら、もうひと花咲かせないと、時間を持て余してしまいそうだ。
私は、「そうだね、50代はやりたいことをやれる最後のチャンスかもしれないよね。会社にしがみつく必要はないと思う」と話し、彼女も、「そうだよね〜」と、考えをまとめようとしているようだった。
50代女性が自分の人生を生きるために前向きに会社を辞める。
そのことに私も異論はない。それどころか、私もその選択をするつもりだ。
がしかし、でも・・・とも思う。
50代の女性が次々と会社を去るという現象を、日本の社会は良しとしていいのだろうか?
もちろん、リストラだってあるし、男女問わず、アラフィフで会社を去る人は多いのかもしれない。
けれど、自ら去ってしまうのは、女性の方が多い気がする。
家族を養っている人が少ないから? もちろん、それもあるかもしれない。
けれど、私はむしろ、やっぱり「会社がきつい」と感じる人が多いからのような気がする。
女性は、50代になってからも、仕事がきつい傾向にある。
役職がつかず平社員のまま、または先の彼女のように一般職だったりすると、
年齢を重ねていても、仕事内容は若い時のまま、うっかりすると、ノルマは増え、
そして、部下もいなくて、自力でやるしかない、ということになるのだ。
若い頃はできたことも、50代の体力ではきつくなることもある。
平ではなく管理職になっていたとしても、なぜか細かい面倒な仕事は、女性に回ってきがちということもあると思う。
私は管理職なのだけれど、「おじさん」がやりたがらないことを引き受けてしまうことが多い。
ひとつひとつは小さなことなので見過ごされるのだけれど、積もり積もると負担は大きい。
例えば、「倉庫の整理」とか「不要な書類の廃棄」とか、男性がなぜか「俺の仕事じゃない」と思っている仕事が回って来てしまうのだ。
「男はもっと重要な仕事をしているのだ」と言われるかもしれないけれど、重要な仕事を男だけでやっているなら、それはそれで問題なんじゃないだろうか。
FIREという考え方もあって、若い人も会社で働くことに魅力を感じていない昨今、やっぱり会社組織というのも変わらなければいけないんじゃないかな、と思う。
とはいえ、とりあえずは自分の健康と生きやすさを優先していいんだと思う。
無理せずに、我が道を行くことが、結果的に社会を変えるということもあるかもしれない。
あと何年生きて、どんな風に歳をとっていくんだろう。
一筋縄ではいかない人生だけど、これからも楽しみだとも思った週末だった。
松原庵でいただいた、お蕎麦とくらかけ豆の塩ゆで。
どちらもさっぱりしていて、上品なお味でした。
☆参加中です